枕古賀子・序段 −四季−

春は、曙(あけぼの)。K-1のリングで殴られてマットに沈む有様に少し呆れる。紫のアザを携えながら控え室に消える影が、細くたなびきたる。相撲の力は格闘技では通用しなかった。

夏は、夜。月に照らされるのは、皿なり。皿の上を、闇に紛れて手が多く飛び交う。そして、一つ二つなど、皿から持って行かれるのはお菓子。飴に代表される、お菓子。そんなハロウィンの夜。あ、秋だった。

気を取り直して、秋。秋は、夕暮。夕日が山の葉に近くなればなるほど、葉が熱くなってついには火がつく。火に寝床を奪われたカラスが、二匹三匹、四匹と飛び急ぐ姿は哀れなり。火がおさまって、風の音、虫の音が鳴り響く中、カラスの列が戻ってきて、寝床の跡を見て「ガーン」とショックを受ける様は、何とも言い様が無い。

冬は、勤めて…って。もう朝か。仕事に行かないと。ちくしょう。雪の降る日は言うまでも無く、道路でツルッと滑って頭を打つ。よく見たら雪じゃなくて、霜じゃないか!俺は霜ごときに足を滑らせたのか?くそ、屈辱だ!こうなったら火を使って、てめえらを炭にしてやる!ははは、見る見るうちに霜が燃えて消えてくぜ!おお、そうこうしているうちに昼になって…あ、会社から電話が!はい、今から向かいます!

「ガシャ」

あれ?なんで右手に手錠…?

「放火の現行犯で逮捕する!」

しまった、怒りに我を任せて何てことを!こんなことで前科一犯に!俺の心は白い灰となって砕け散ってしまったようだ…



序段・追記

「徒然古賀」「方丈古賀」に引き続いて、新しい物語・エッセイ集となる「随筆・枕古賀子」を開始しました。初代の「徒然古賀」の流れに近いものを書ければと思っています。
どこまで続けられるか不安ですが、行く末を見守っていただければと思います。

(2007.1.14 記)


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