アイマスクとヘッドホンを外されたとき、俺は見知らぬ箱の中に閉じ込められていた。箱には小さな小窓があってそこからプロデューサーの顔が見える。
「何をさせる気だ!プロデューサー!」
「君が今入っている箱は車輪がついていて、外から他の人に押してもらうことによってのみ進むことができる。ここは青森。今からお前にはこの箱に入ったまま東京まできてもらうのさ。」
「そんな無茶な…!」
「ちなみにどれだけ叫ぼうとも外に君の声は聞こえない。箱の中から君の意思表示を外の人に示す方法はただ一つ。手元のキーボードで文字を打てばその文字が箱の外側にある電光掲示板に出てくるようになっている。さあ、がんばりたまえ。」
それだけ言い残してプロデューサーは去ってしまった。ちくしょう!こんな無茶な話があるか!押してもらうだけで青森から東京までの距離を進むなんて…
お、小窓から人が歩いてくるのが見えた!俺は早速手元のキーボードをたたき、こう伝えた。
「ここから出してくれ!」
後の段に続く。
そして、俺は亜種人に進められるままに席に着いた。そして、やってきたのはショートヘアのボーイッシュな女性である。
ケニー:「どうも。こんにちは。お名前は?」
女性:「私は千里(ちさと)。年齢は24。何たって、バッチリ『チリ足』の千里だからね。これ、私のチャームポイントだから。」
ケニー:「はあ…。チャームポイントですか。でも『チリ足』ってネタが古く…」
千里:「作者がネタを出し惜しみするのが悪いのよ。」
ケニー:「まあ、確かにそうですけれど。そうそう、千里さんの職業は?」
千里:「夕日新聞社で記者をやってるの。とにかくスクープを探すのが仕事だからね。こうやって手帳は常に携帯してるのよ。あ、そうそう。名刺渡すの忘れてたわ。はい、これ。」
ケニー:「あ、どうも…。」
千里:「あ、携帯が鳴ってる。はい。こちらです。はい。もう仕上がってます。すぐにメールで送ります。」
そして慣れた手つきで携帯のボタンをたたいてメールを送る。それにしても…すごく仕事熱心な人って感じである。
なんか頼れる…
ケニー:「あの…独身ですか?」
千里:「え?」
…。
千里:「あ、失礼。独身だけど。」
よし。前回のようなオチにはならずに済みそう。つき合ってください!そう言うぞ。
ケニー:「…話があるんです。」
亜種人:「ちょっと待ちな。」
気が付けば俺の隣には亜種人が座っている。
ケニー:「どういうつもりだ、亜種人。」
亜種人:「千里さんとつき合おうと思っているのはお前だけじゃないってことだよ。」
何ー?こいつ、俺の舎弟の分際で…!
ケニー:「千里さん!こんな奴気にすることないです。僕とつき合ってください!」
亜種人:「いや、僕と…!」
千里:「一度に二人と付き合うわけには行かないし…そうだ、ここはレストランだし、今からあなたたち二人で『フードファイト』で勝負してもらいましょう。勝ったほうとデートしてあげる。」
マジですか?フードファイトとはまた突拍子も無い。ていうか日本紀行でもこのネタやってなかったか?まあいい。舎弟の亜種人なんぞに負けるわけがない。勝負してやろうじゃないか!
あとの段に続く。
第五十段 「ブラインドタッチ」
「何で『キーボードを見ずにキーを叩いて自分の出したい文字を出力する』なんてことができるんだ?」
と信じられない気分でいっぱいだった。当時は本当に大学でしかパソコンを触る機会が無くキーボードを叩きなれていないせいもあったかもしれないが、本当に次に叩くキーを探しながらキーを叩いていたのでブラインドタッチなどもう雲のかなたの話であった。ワープロとかは家で触っていたが日本語を入力するにも「ローマ字入力」を使わずに「ひらがな入力」を使っていて日本語入力をするときとローマ字を入力するときとで2種類のキー配置に慣れる必要があった。結局日本語を入力するときにも「ローマ字入力」を使うようになったが、結果としてはキーを叩くスピードが若干速くなったぐらいにとどまりブラインドタッチに到達するにはまだ程遠かった。
というわけでブラインドタッチのことはずっと頭から離れていたのだが最近自分はそれなりの速度でキーを叩くことができることに気づいた。そして「ある程度指がキー配置を覚えてきているのではないか?」と考え始め、長いこと考えもしなかったブラインドタッチのことが頭をよぎり、何日か前、実際に試してみた。結果は惨敗。やっぱりキーボードを見ずには文字をただしくうてません。しかし以前に比べて手ごたえみたいなものがあったのも事実である。
「古賀健太郎」
上の文章をブラインドタッチで打ってみる。
「個hで下がヶrkwくぇrt…。
無理らしい。結局キー配置が完全に頭に入っていないようである。チャットとかをやっているとブラインドタッチは自然に身につくらしいけれど…。